適切な回避の勧め -被災地外の方へ-

 震災に関するテレビ番組を一旦見始めると、チャンネルを替えたり切ったりすることができず、いつまでもずっと見続けてしまう、という人が多いようです。特に東日本大震災の被災地では、熊本の震災番組を見続けて、3.11の被災当時のことを思い出し、涙が止まらなくなるという人たちも少なくないと聞いています。さらにこの現象は、東日本だけに限らず、私の住んでいる関西地方でも、そのようになってしまう人が、少なからずいるようです。


なぜチャンネルを替えたり、切ったりすることが出来ないのでしょう?いくつかの理由が考えられますが、一つは、チャンネルを切ることが、現地で被災して辛い思いをしている方々に申し訳ないという気持ちがはたらくということがあるでしょう。さらに、チャンネルを切っている間に重要な情報が流されて、それを見過ごしてしまうことが怖いということもあるようです。

 

適切な回避は、自分を守るために必要です。

 

災害による恐怖やショックを体験すると、

  1. 思い出したくないのに思い出す(再体験)
  2. 感覚的、身体的にとても敏感になる(過覚醒)
  3. 関連する刺激を避ける(回避)

の3つの反応が起こり、それが大きなストレスになるという心理状態が引き起こされます(直接体験ではなくそれを見たり聞いたりした時にも、程度の差はありますが同じような事態が起こります。)。この3つの反応のうち、3番目の回避の反応がPTSDの原因になるということが今では分かっています。つまり、体験に向き合わずこれを避けることが、PTSDを引き起こすわけです。


そうすると、辛くても事実にきっちりと向き合う=直面化することは、恐怖やショックによるPTSDを予防する意味でとても重要になります。しかしながら、この直面化は、実はとても辛く苦しい作業でもあります。いやなもの/ことと向き合うのだから当然ですね。それは、あなたがあまり好きじゃない人と2人で食事をする羽目になった場面を想像すると分かり易いと思います。要するに、とても辛い作業であるために、自分の限界を超えてそれを続けることは出来ないわけです。

 

だから直面化する時には、自分で対峙できる範囲の事実や情報を選択し、それをとりこんだら、次にチャンネルを一度切断して、自分の中で反芻、処理するための時間を持たなくてはなりません。その作業の中で、おそらく足りない情報や、もっと知りたい情報が明らかになってきます。次は、その不足している情報を選択的に取り込んでいく…こういう姿勢が必要になります。この、一度チャンネルを切断して、次にまた選択的に取り込むまでの期間を、適切な回避と呼ぶわけです。回避せずに直面化するというのはそういうことであって、氾濫する情報の海に、無防備に身をさらすことではないのです。

 

(2016年4月27日 文責:高橋哲)